| 北海道大学大学院歯学部分子生化学教室にて博士課程を修了しました.その際にまとめた博士論文の要旨を掲載します.興味のある方はご覧下さい. | 院長のホームページにもどる | ||||||||||
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| タイトル インプラント体周囲の早期骨変化量と粘膜のTNF-α mRNAの発現
○南部 聡 藤沢 隆一 田村 正人 A study of the relationship between early marginal bone loss and the expression of TNF-_ in gingiva in implant treatment |
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| 抄録 インプラント治療は,歯科臨床において一般的な治療法の一つとして広く行われるようになった.しかし,現在に至っても,その予後が不良となる症例も多く,また治療の経過において,この予後を推測しうる診断法は確立していない.本研究では,インプラント症例のインプラント体周囲の歯槽骨の骨変化量及びインプラント体の直上粘膜組織中のTumor necrosis factor(TNF)-_のmRNA量を測定し,両者の関係を調べた. スプラインインプラントを埋入した患者54名,118本(上顎48本,下顎70本)のインプラント患者を対象とした.患者は男性13名,女性41名,インプラント埋入時における平均年齢は55.1歳であった.インプラント体埋入時および2次手術時にインプラント体の近心,遠心,頬側及び舌側の4点について,インプラント体上縁から骨頂縁まで距離をポケットプローベにて計測した.それぞれの計測時における4点の計測値を総和し,2次手術時のその値より埋入時の値を差し引いた値を早期骨変化量とした.また,2次手術時のインプラント体直上粘膜組織からtotal RNAを抽出し,reverse transcriptase-polymerase chain reaction法を用いて TNF-_ mRNA量を測定した.インプラント患者の性差,上下顎差,喫煙の有無ならびに粘膜裂開の有無と早期骨変化量及びインプラント体直上粘膜組織のTNF-_ mRNA量の関係を調べた. 早期骨変化量がプラスの値を示したインプラントは83本,マイナスの値を示したインプラントは35本であった.患者の性差、顎差によっては早期骨変化量に違いが認められなかったが,粘膜が裂開しなかった症例に比べて粘膜が裂開した症例で早期骨変化量が大きかった.インプラント体直上粘膜組織のTNF-_ mRNA量は,患者の性差による差はなかったが,非喫煙例よりも喫煙例が有意に高い値であった.また、早期骨変化量がマイナスのものに比べ,プラスであったもので有意に高い値であった. これらの結果より,インプラント体周囲の歯槽骨の早期骨変化量とインプラント体直上粘膜組織のTNF-_ mRNA 量に関係があることが明らかとなり,粘膜組織中のサイトカインの産生がインプラント体周囲骨の早期骨吸収に関与していることが分かり、インプラント治療の予後を推測しうる一つの指標となる可能性を示唆した.臨床的により簡便で確実な方法による検査方法の開発が期待されると考えられた. キーワード:インプラント,早期骨変化量,TNF-_ |
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| 緒言 喪失した歯牙の代替としてデンタルインプラントを埋入する治療は,現在では広く行われるようになった.これは、オッセオインテグレーションの概念に基づく骨結合型インプラントが開発され,手術時の侵襲や患者の負担が少なくなったことによる1-4).また,近年、ハイドロキシアパタイトをチタン表面にコーティングする技術的改良も加えられている5).しかし,現在に至っても植立後にさまざまな要因によりその治療後の予後が不良となる症例がある.これら予後不良な場合の多くは,インプラント体周囲の炎症とそれに伴う歯槽骨吸収によることが多いとされている6-10).一般的に骨結合型インプラントの失敗は,オッセオインテグレーションの獲得の失敗 (early failure) とオッセオインテグレーションの喪失(latefailure)の2種類に大別される11).Earlyfailureは荷重負荷前のフィクスチャーの脱落であり,late failureは荷重負荷後の骨吸収によるフィクスチャーの脱落である.インプラント治療の臨床成績を向上するためには,それぞれの過程に関与する因子を明確にする必要があると考えられている12-14).しかしながら,それらの要因が複合的に関与していることから,インプラント埋入後において治療の良否を判定せざるを得ない.インプラント埋入後において治療の良否の判定は,視診、触診、ペリオテス(Gluden Inc, Germany)、オステル(Integration Diagnostics Ab, Sweden)等の診断により判断を行っているのが現状である.したがって,インプラント埋入後の治療経過をモニターもしくはその後の予後を予測しうる検査法が確立されれば,臨床的に意義は大きいといえる. 近年ではインプラント体周囲の骨の吸収量をエックス線もしくはComputed Tomography (CT)を用いた測定が行われるようになった.これは,インプラント埋入術後の初期における歯槽骨の吸収が多い症例では,その後の歯槽骨の骨吸収が大きく予後が不良になるとことが多いといわれているためである.2回法インプラントでは,1次手術および2次手術時に歯槽骨の骨面を直視することが出来るため,歯槽骨の状態をこの2つの時期に直接測定することが可能である.そこで,本研究では2回法インプラントの症例において,インプラント体の周囲の4点(近心,遠心,頬側及び舌側)のインプラント頂間距離を測定し,早期骨変化量を算出した. Tumor necrosis factor (TNF)-_は、活性化マクロファージが産生する代表的なサイトカインである。単球やリンパ球もさまざまな刺激によりこのTNF-_の産生が誘導される.TNF-_の作用は,炎症,免疫反応,細胞増殖や分化の促進など多岐にわたることが知られている.骨においては,TNF-_は骨芽細胞のRANKL - RANK 系を介さずに,破骨細胞への分化を誘導する,しかしTNF-_は破骨細胞の活性化や機能を亢進させる作用を有していない15).本研究では,インプラント症例の2次手術時に採取したインプラント体直上粘膜組織中のサイトカインに注目し,TNF-_ mRNA 量をReverse transcriptase polymerase chain reaction (RT-PCR)法を用いて測定した.インプラント患者の性差,上下顎差,喫煙の有無ならびに粘膜裂開の有無と早期骨変化量及びインプラント体直上粘膜組織のTNF-_ mRNA量の関係を明らかにすることを目的とした. 材料と方法 1.研究対象としたインプラント症例 2004年3月から2005年7月までの期間に,るもい南歯科クリニックおよび上士幌歯科クリニックにおいて,インプラント治療の適応があると診断し,スプラインインプラント(Zimmer Dental Inc, CA)を埋入した患者のインプラント上顎48本,下顎70本の合計118本を研究対象とした.研究対象とした患者は男性13名、女性41名,インプラント埋入時における年齢は21歳から75歳で平均年齢は55.1歳であった.問診にて代謝性疾患を有する患者及び埋入手術時に歯槽骨の著しい吸収や萎縮のため骨移植術もしくは骨造成術を行った症例は,治療機転の平均化が難しいと判断し本研究対象から除外した.本研究の対象とした症例は,いずれも咬合検査,レントゲン検査及びCT検査を行い,埋入の位置及び本数を検討し,インプラント体を埋入した.使用したインプラント体は,ハイドロキシアパタイトコーティングされたチタン製フィクスチャーであり,2回法によって行った.埋入手術は、2%キシロカイン1/8万エピネフリン含有(株式会社フジサワ,日本)にて局所麻酔下で替刃メスにて切開し,剥離子にて粘膜骨膜剥離弁を形成後,術前に決定した位置に注水下にて埋入窩を形成し,インプラント体を埋入した.本研究計画は,北海道大学大学院歯学研究科倫理委員会にて承認され,治療開始前に対象とした患者に対し研究の主旨を説明し、文書による同意を得た. 2.早期骨変化量の測定 インプラント埋入手術時に,インプラントの近心,遠心,頬側及び舌側の4点について,インプラント上縁から骨頂上縁までの距離(インプラント頂間距離:depth of bone and implant ( DBI ))をポケットプローベにて測定した.免荷時期を,上顎では6ヶ月,下顎では3ヶ月とし,インプラント2次手術時に埋入手術と同様にインプラントの近心,遠心,頬側及び舌側の4点について,DBIを測定した.インプラント2次手術時の4点の DBI の総和より,インプラント埋入時の4点のDBIの総和を差し引いた値を,早期骨変化量とし、早期骨変化量に対する性差、顎差および粘膜の裂開の影響について検討した. 3.粘膜のTNF-_ m RNA量のRT-PCR法による測定 2次手術時に粘膜骨膜弁を剥離した際,インプラント体直上の粘膜を直径5 mm、高さ3 mm程度の円柱状に採取した.採取した粘膜は,直ちに500 _lのRNA later (タカラバイオ, Shiga, Japan)に浸漬し,- 4 ℃ にて12時間インキュベートした後,- 30℃にて冷凍保存した.これらの粘膜試料を,マイクロミキサー(サンズエンジニアリング, Tokyo, Japan)を用いて粉砕した後,total RNAをIsogen (ニッポンジーン, Tokyo, Japan )を用いて指定する方法に従って得た.Total RNA は乾燥させた後,20 _lのTE緩衝液に溶解した.RNAの定量は,260 nmにおける吸光度をSmart Spec TM 3000 (BioRad, CA)にて測定し行った.Total RNA 1 _gをRandom 9 merプライマー及びRNA PCR KIT ver. 3.0(タカラバイオ)を用いて逆転写反応を行い cDNAを合成した.この合成したcDNAを鋳型として,以下のプライマー及びTaq DNAポリメラーゼを用い,PCR法にてDNA断片を増幅した.この反応は,イニシャルインキュベーションとして95℃,5分,熱変成95℃,30秒,アニーリング58℃, 30秒,伸張反応72℃,90秒の3ステップをTNF-_ cDNAでは25サイクル行った.使用したプライマーの塩基配列は以下である.TNF-_, 5'- AGCTGCCAGGGTTCTCTTCC-3'及び5'-GGTTATCTCTCAGCTCCACGCCA-3', glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH), 5'-GTGAAGGTCGGTGTC AACG-3'及び5'-GGTGAAGACGCCAGTAGACTCC- 3'.予想される増幅産物のサイズはTNF-_は125 bp, GAPDHでは318 bpである.増幅したDNAを2 %アガロースゲルにて電気泳動し,エチジウムブロマイドで30分染色後,紫外線イルミネーター上で写真撮影した.TNF-_の増幅されたDNAのバンドの濃度をNIH Imageにて定量化し,GAPDHのバンドを1として,濃度を数値化した. TNF-α mRNA発現量に対する性差、年齢差、顎差、喫煙の有無、粘膜裂開の有無の影響について検討した. 4.統計処理 早期骨変化量,TNF-__mRNA量の測定値及び両者の関係は,Student's t - testにて検定した.P <0.05を有意水準とした. 結果 1.インプラント体周囲の早期骨変化量 研究対象とした118本のインプラント早期骨吸収量の分布を表1に示した。平均は2.0 mm,標準偏差は3.3 mmであった.早期骨吸収量がプラスの値を示したインプラントは83本,0 以下のインプラントは35本であった.患者の性別による早期骨吸収量の平均値には違いが見られなかった(図1A).インプラント体が上顎の場合は,下顎の場合に比べ早期骨吸収量の平均が大きな正の値を示したが有意な差はなかった(図1B).インプラント免荷時期に粘膜が裂開した場合としなかった場合の早期骨吸収量を比較した.治癒期間中にインプラント体直上粘膜が裂開しインプラントヘッド部が露出した12本のインプラント周囲の早期骨変化量は,粘膜裂開を起こさなかった106本に比べ大きな値であり,有意な差が認められた(図 1C). 喫煙の習慣のある患者の11本のインプラント周囲の早期骨変化量は、喫煙習慣のない患者の107本に比べ大きな値であり、有意な差が認められた(図1D). 2.インプラント体直上粘膜組織のTNF-__mRNAの発現量 2次手術時にインプラント直下より採取した粘膜よりtotal RNAを抽出し, RT-PCR法によりTNF-__mRNAの発現を調べた.症例A(早期骨吸収量;9 mm),症例B(早期骨吸収量 ; 5 mm),症例 C (早期骨吸収量;3 mm)、症例D (早期骨吸収量;-2 mm)のいずれの場合もTNF-_ m RNAの発現が見られた(図2).症例A, B及びCの粘膜のTNF-__mRNAの発現は,症例Dの粘膜のTNF-__mRNAの発現より高かった(図 2).全ての118本の粘膜のTNF-__mRNAについて定量化し,インプラント体周囲の早期骨吸収量と関係があるか調べた.早期骨吸収量がプラスであった粘膜のTNF-__mRNA量は,早期骨吸収量が0以下であった粘膜に比べ高い値であり両者の間には有意な差が認められた(図3). 患者の性差もしくは年齢によりインプラント直上粘膜のTNF-__mRNA量に違いがあるか調べた.女性(41名,92本)の粘膜のTNF-__mRNA量の平均値は,男性(13名,26本)のそれよりも多かったが,有意な差は認められなかった(図4A).患者の年齢を10歳ごとに分けて比較したところ,インプラント直上粘膜のTNF-__mRNA量は,患者の年齢によりバラツキがあり50 ~ 59歳の症例(19名,60 本)は他の年齢に比べて高い値であったが、有意な差は認められなかった.(図4B). 次に,免荷時期に粘膜が裂開した場合としなかった場合の粘膜のTNF-__mRNA量を比較した.粘膜が裂開した12本のインプラント直上粘膜のTNF-_ mRNA量は粘膜が裂開を起こさなかった106本に比べ大きな値を示し,両者の間には有意な差を認めた(図4C).また,患者の喫煙習慣の有無と粘膜のTNF-__mRNA量を比較した.喫煙習慣を有する患者(5名,11本)のインプラント直上粘膜のTNF-__mRNA量の平均値は,喫煙習慣を有しない患者(28名,107本)の約 5.3 倍と有意に高い値を示した(図4D). 考察 本研究では,2回法インプラントシステムにおいて,埋入から補綴物による荷重負荷前の2次手術時までの期間におけるインプラント体周囲の骨の変化を調べた.すなわち,いわゆるlate failure以前の早期の歯槽骨の変化である.118 本のインプラントのうち,83本すなわち70.3%のインプラントでは早期骨吸収量が0より大きく,インプラント体周囲での歯槽骨が吸収された結果と考えられた.この割合は,免荷期間の早期骨吸収量について調べたこれまでの論文とほぼ同程度であった16).他方,早期骨吸収量が0もしくはマイナスを示し,歯槽骨が増加したかのような症例もあり,必ずしもこの期間に歯槽骨吸収が生じるとは限らず,何らかの要因がこれら骨吸収に関与するものと考えられた.インプラント埋入時の歯槽骨片を試料として用いRNAを回収することを試みたが,骨組織中の細胞数が少ないためかRNAの抽出が困難であったため,本研究では,入手しやすい試料を用いて評価を試み,2次手術時に不要となるインプラント直上の粘膜を採取して,これら粘膜組織中のTNF-__mRNAの発現量を測定した. インプラント治療の予後は,一般にインプラント体を埋入する骨がある程度緻密である骨質の方が良好であると考えられ、特に上顎は緻密度が低いといわれているが、早期骨吸収量に対する顎差の有意差が認められなかった.患者の性別により早期骨吸収量に違いが認められなかったことから,性差による骨の性状の違いの程度はインプラント体に与える影響が小さいであろうと考えられた.宮本らは,性別,年齢,上下顎間およびインプラント体の直径はearly failureに有意な差がなかったと報告しており,本研究の早期骨吸収量の結果と一致していた12,13).他方,粘膜の裂開の有無による早期骨吸収量の差は,粘膜の裂開により裂開部位に生じた炎症によって骨吸収が促進された可能性が考えられた.2回法インプラントの免荷時期に粘膜の裂開を生じる原因は不明だが,粘膜が裂開した場合,インプラント体周囲の骨吸収が大きくなるという報告もあり,本研究の結果と一致すると考えられた17). これまで歯周病に関しては,その発症と遺伝的素因に関する研究成果の報告もされている18).しかし,多くの疾患と同様に単一遺伝子多型よりも多因子が関与すること,また環境要因の関与も大きいことなどから,歯周病の診断法として臨床的に用いられるには至っていない.また,歯周病の診断法が確立されたとしてもその診断法をそのままインプラント治療に流用するには困難を伴うと考えられる.歯肉溝滲出液中の種々の分子を,歯肉代謝の一つの指標として用いる試みもなされてはいるが,現時点では,局所の骨や結合組織の状態を反映しうる指標となる分子は知られていない.本研究では,TNF-_のmRNA量を測定した.早期骨吸収量がプラスであったインプラント体の直上粘膜組織では,TNF-__mRNAの発現量が,マイナスであった粘膜よりも有意に高い値を示したが,これは摘出時の肉眼的な所見からは確認できなかったものの早期に骨吸収が生じたインプラント症例の粘膜には炎症が生じていたことに起因すると推察された.本研究では,粘膜組織中のどの細胞がこのmRNAを発現しているか,またサイトカインとして活性を有するタンパク質を産生しているか明らかにはできなかったが,これらインプラント症例では,何らかの刺激により粘膜組織に炎症が生じ,TNF-_ mRNAの産生が上昇した可能性が考えられた.また,早期に骨吸収が生じる患者では遺伝的素因等何らかの原因でTNF-__mRNA の発現誘導がおこりやすいという可能性も考えられた19). 粘膜裂開を起こしたインプラント症例で,直上粘膜組織のTNF-__mRNA量が多かったのは,肉眼的な所見として歯垢に類する付着物の存在があり、裂開部位の細菌感染の炎症による可能性が推測された.喫煙は,歯周疾患やインプラント周囲炎の発症や進行を促進すると一般に言われ,インプラントの臨床成績との相関性が報告されている20).本研究で粘膜組織のTNF-_ mRNA量が喫煙経験者の方が非喫煙経験者より多かったという結果は,喫煙による炎症の程度などを反映している可能性が考えられた. インプラント治療の治療経過において粘膜もしくは歯槽骨の状態をモニターし,治療の予後を正確に判定しうる指針となる指標を得る診断法が確立されることが望ましいと考えられている.本研究では,2次手術時の粘膜組織中の TNF-_ mRNA量を測定したところ,早期骨吸収量と関係があることが明らかになった.mRNA発現の定量はゲルにおける濃淡を用いたため,正確なmRNA量を反映しているわけではない.このために正確なmRNA量と早期骨吸収量の量的な相関関係は明らかではない.また,早期における歯槽骨の骨変化量が,必ずしもその後の予後ならびに臨床成績の良否にいかなる影響を与えているかについては,確かではない.しかしながら,粘膜組織中のサイトカインの産生が早期骨吸収量をある程度反映している可能性も考えられ,インプラント治療の予後を推測しうる一つの指標となる可能性を示唆したと考えられた.臨床的にはより簡便で確実な方法による検査方法の開発が期待されると考えられた. 結論 スプラインインプラント患者54名,118本のインプラント症例を対象とし,インプラント埋入時と2次手術時にインプラント頂と歯槽骨の距離を,1インプラント当たり4点計測し,早期骨吸収量を測定した.また,2次手術時のインプラント患者の性差,年齢差,上下顎差,喫煙の有無および免荷時期における粘膜裂開の有無による早期骨吸収量ならびに粘膜組織のTNF-__mRNA量の相関について調べ,以下の結論を得た. 1.早期骨吸収量は,粘膜裂開症例において裂開が認められなかった症例に対し、また喫煙者において非喫煙者に対し、有意に高い値を示したが、性差および顎差の影響は認められなかった. 2.インプラント体直上粘膜組織中のTNF-__mRNA量は、粘膜裂開症例において粘膜裂開を認めた症例に対し、また喫煙者の症例に対し、有意に高い値を示したが、患者の年齢、性差の影響は認められなかった. 3.早期骨吸収量が0以上のインプラントでは,インプラント体直上粘膜組織のTNF-_ mRNA量が早期骨吸収量が0以下のインプラントに比べて多かった. 本稿を終えるにあたり、終始ご助言とご協力を賜りました北海道大学大学院歯学研究科口腔分子生化学教室員の皆様に厚く御礼申し上げます。また、常にお気遣いいただいた北海道形成歯科研究会の皆様、更に、いつも内助を果たしてくれた妻、ひとかと長女、ひみかに心から感謝の意を表します。 |
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| 文献 1) Ghanavati, F., Shayegh, S. S., Rahimi, H., Sharifi, D., Ghanavati, F., Khalesseh, N. and Eslami, B.: The effects of loading time on osseointegration and new bone formation around dental implants: a histologic and histomorphometric study in dogs. J. Periodontol. , 77 : 1701 - 1707, 2006. 2 ) Molly, L.: Bone density and primary stability in implant therapy. Clin .Oral Implants Res., 17 : 124 - 135, 2006. 3) Natali, A.N., Pavan, P. G., Schileo, E. and Williams, K. R.: A numerical approach to resonance frequency analysis for the investigation of oral implant osseointegration. J. Oral Rehabil., 33 : 674 - 681, 2006. 4) Jablonski,D.:The comparison of usefulness prosthetic rehabilitation with removable and fixed suprastructures on endosseous implants. Ann. Acad Med Stetin., 50 : 123 - 129, 2004. 5) 福原 篤、石垣佳希、白川正順:超薄層 HA コーティングインプラントに関する実験的研究-生体力学的検討-. 日口腔インプラント誌、18: 39 - 46, 2005. 6) 前田康英、大村真基、小笠原健文、石垣佳希、宗村 治、五百蔵一男、白川正順:インプラント経過不良21例の臨床統計. 日口腔インプラント誌、13:155 - 162, 2000. 7)笠井唯克 、磯貝昌彦、蔡豪 倫、永原國央、山内六男、高井良招、兼松宣武:摘出インプラント24症例の臨床的評価. 日口腔インプラント誌、13:140 - 148, 2000. 8) De Wlis, F., Cune, M. and De Putter, C.: Delayed implant in the anterior maxillo with the IMZ - implant system. J. Oral Rehabilitation, 22 : 319 - 326, 1995. 9) Hass, R., Mensdorff - Pouilly, N., Mailath, G. and Watzek, G.: Survival of 1920 IMZ implants followed for up to 100 months. Int. J. Oral Maxillofac. Implant., 11 : 581 - 588, 1996. 10) 大音孝一、荒木久生、毛内伸威、元村洋一、松田 哲、宮田 隆:過去10年間におけるIMZインプラントの生存率. 日口腔インプラント誌. 13 : 22 - 29, 2000. 11) Esposite, M., Hirsih, J. H., Lekholm, U. and Thomsen, P.: Biological factors contributing to failures of oral implants : 1.success criteria and epidemiology. Eur . J. Oral Sci ., 106 : 527 - 551, 1998. 12) 宮本洋二、藤沢健司、湯浅哲也、桃田幸弘、長山 勝、山内英嗣、坂東永一、日野出大輔:歯科インプラントのオッセオインテグレーション喪失に関するリスクファクターの検討. 日口腔インプラント誌, 16 : 78 - 88, 2003. 13) 宮本洋二、藤沢健司、湯浅哲也、桃田幸弘、長山 勝、山内英嗣、坂東永一、日野出大輔:歯科インプラントのオッセオインテグレーション獲得に関与する臨床的要因の検討. 日口腔インプラント誌、15 : 436 - 445, 2002. 14) 荒川 光、窪木拓男、完山 学、園山 亘、小島俊司、矢谷博文、植野高章、高木 慎、菅原利夫、真野隆充、松村智弘,:口腔インプラントの生存率に関する疫学調査:オッセオインテグレーションの獲得と維持からみた評価. 日口腔インプラント誌, 15 : 66 - 74, 2002. 15) 宮崎 剛、田中 栄:破骨細胞の機能・骨吸収メカニズム骨吸収促進因子 TNF-α. 日本臨床, 62 : 112 - 115, 2004. 16) Lindquist, L. W., . Carlsson, G. E. and Jemt, T.: Association between marginal bone loss around osseointegrated mandibular implants and smoking habits: A 10-year follow-up Study. J .Dent. Res., 76 : 1667 - 1674, 1997. 17) Toljanic, J. A., Banakis, M. L., Willes, L. A. and Graham, L.: Soft tissue exposure of endosseous implants between stage I and stage II surgery as a potential indicator of early crestal bone loss. Int J. Oral Maxillofac. Implants., 14 : 436 - 441, 1999. 18) Roberts, F. A., Mccaffery, K. A. and Michalek, S. M.: Profile of cytokine mRNA expression in chronic adult periodontitis. J. Dent. Res., 76 : 1833-1839, 1997. 19) Furuta, I., Kobayashi, N., Fujino, T., Kobamatsu, Y., Shirogane, T., Yaegashi, M., Sakuragi, N., Cho K., Yamada, H., Okuyama, K., Minakami, H.: Bone mineral density of the lumbar spine is associated with TNF gene polymorphisms in early postmenopausal Japanese women. Calcif Tissue. Int. 74: 509 - 15, 2004. 20) 山田陽一,新美 敦、澤井俊宏、渡邉和代、日比野祥敬、中井英貴、本田雅規、藤本雄大、村上 斉、山谷 誠、鈴木英治、松山 実、小関健司、後藤康之、竹内 学,川合道夫、小原仁、日比英晴、上田実:オッセオインテグレテッドインプラントに対する喫煙の影響. 日口腔インプラント誌、15 : 39 - 42, 1997. |
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